医薬品メーカー

ゲノム革命で医薬品会社には新たな人材が要求され、
一方で開発競争、販売競争はさらに過熱。
規制緩和も手伝って、世界的な業界再編が進みつつあります。


日本の医薬品産業の歴史

 日本の医薬品産業は、大阪の道修町にさかのぼります。いまから400年以上前の安土・桃山時代に、和漢薬を扱う薬種商たちが大阪の道修町に店を構えたのが始まりで、江戸時代には薬の輸入や流通を取り仕切る薬種仲買の組織も作られ、日本の薬業の中心地としてにぎわいました。1678年創業の田辺医薬品や、1781年創業の武田薬品工業のルーツもまさにこの薬種問屋にあります。
 神戸港から輸入した薬を売ることで利益を上げていた薬種商たちが、自ら薬を作る医薬品業に転換したのは、第1次世界大戦で輸入が途絶えたのがきっかけです。薬の国産化に向けて道修町には新薬メーカーが次々に設立され、今日の発展へとつながっています。

世界を舞台としている医薬品業界

 国内の医薬品メーカーは約1250社、うち外資系は60社程度ですが、海外の大手メーカー系列がほとんどで、外資上位30社の市場シェアは30%以上を占めています。
 一方、最近は日本企業の海外進出も進んできています。かつては、日本のメーカーは輸出力に欠けていましたが、近年は大手医薬品企業の海外進出が目覚しく、現地での生産が進むなど海外売上の比率を高めています。
 しかし、日本市場で売上高一位の武田薬品工業でも、売上高で見れば世界15位前後に過ぎません。欧米では、日本よりも一足早く業界再編の嵐が吹き荒れ、巨大な医薬品メーカーが次々誕生しました。例えばファイザーは、2003年に同じ米国のファルマシアを買収しました。また、サノフィ・アベンティスは、2004年にフランスのサノフィ・サンテラボが、同じフランスのアベンティスを買収して世界第2位の規模になりました。
 大手医薬品企業が規模拡大を目指す背景には、激しい新薬開発競争があります。新しい薬を世に出すためには、10〜18年もの歳月と150〜200億円という膨大な経費が必要とされます。企業規模の拡大による研究開発費の充実が、バイオインフォマティクス(生物情報科学)などを活用したゲノム創薬の競合に勝ち残る大きなポイントになる、といわれています。

ゲノム創薬とは

 ゲノム創薬とは、コンピューター解析等によって得られたヒトゲノム情報を活用し、病気や病態の原因を科学的に解明し、それに効果を示す新しい医薬品を論理的・効率的に研究開発しようとする新しい創薬手法のことです。
 研究者の経験や勘に頼りながら、膨大な数の化合物を合成し、検査し、選択していくというこれまでの医薬品発見のプロセスに較べ、遺伝子情報を基にした合理的な発見プロセスを組むことにより、医薬品発見の確率が飛躍的に向上することが期待されます。
 また、従来のアプローチでは見出す事の出来なかった、新たなメカニズムを持つ画期的な医薬品の登場する可能性に大きな期待が寄せられています。



世界第2位の医薬品市場を抱える日本

 05年の医療用医薬品の売上は5兆7413億円、店頭で販売される一般用医薬品は6115億円になります。医療用医薬品は大衆薬に比べて価格が高く、医療の拡充にともなって着実に売上を伸ばしてきました。現在、日本市場はアメリカに次いで世界第2位の巨大な医薬品市場となっていますが、この市場は、ここ最近ほとんど成長していません。しかし、日本の医薬品市場には日本企業のみならず、外資系の大手医薬品メーカーも進出し、さらに、それらの外資系企業は、圧倒的な資本力や企業体力を武器に、日本の医薬品市場全体に攻勢をかけています。日本市場に海外の医薬品メーカーが参入するのは、日本市場の魅力はもちろんですが、欧米での競争の激化は日本とは比べものにならないことがあげられます。新薬開発が停滞すると、後発医薬品に市場を占有されているということも多々あります。海外の医薬品メーカーにとって開拓の余地のある日本市場への参入は、生き残りをかけた戦略でもあり、また日本市場は外資に対する生理的反発や風土の違いを簡単に乗り越えて、薬効をアピール出来れば、拒否反応は薄く、参入しやすいということもあります。
 外資系企業の進出、医療費抑制など業界を取り巻く変化は大きいですが、「薬」という製品の社会的使命は不動です。時代の変化はありつつも、成長軌道を決してはずさないのが医薬品業界であり、急激な成長は期待できないものの一定規模の大きさを持ち、比較的安定している業界といえるでしょう。



日本の医薬品メーカーの4タイプの将来像とは

 厚生労働省の「医薬品産業実態調査」によると、日本の医薬品メーカーの数は2005年度の時点で1,231社(うち国内資本系が1,172社、外資系が 59社)にのぼります。海外企業の激しい攻勢や競争激化の嵐の中、危機感を持った厚生労働省は、日本の医薬品メーカーが将来どういう企業になっていけば勝ち残っていけるのかを4タイプのビジョンとして提示しています。

1.メガファーマ

 世界的に通用する医薬品を数多く有し、世界市場で一定の地位を獲得する総合的な新薬開発企業タイプ。いわゆる医薬品大手10社といわれる総合医薬品メーカーが、これに当たると思われます。[主なメーカー]武田薬品、第一三共(三共と第一医薬品が合併し、2005年9月発足)、アステラス医薬品(山之内医薬品と藤沢薬品工業が合併し、2005年4月発足)、三菱ウェルファーマ、塩野義医薬品、中外医薬品、エーザイ、田辺医薬品 等

2.スペシャリティファーマ

 得意分野において国際的にも一定の評価を得る新薬開発企業タイプ。専門分野に特化して生き残りを図っていく企業群で、この分野には現在でも中堅医薬品メーカーがひしめいています。[主なメーカー]帝国臓器医薬品、日本新薬、科研医薬品、小野薬品工業、持田医薬品、参天医薬品、三笠医薬品、テルモ、富士レビオ、キッセイ薬品工業 等

3.ジェネリックファーマ

 良質で安価な後発医薬品を安定的に情報提供を充実させて販売する企業タイプ。後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、日本では医薬品市場の約1割程度を占めるにとどまっていますが、欧米では市場の4〜5割を占めるといわれ、今後の伸びる余地を考えると今、最も注目される分野です。[主なメーカー]日本ケミファ、日本医薬品工業、東和薬品、富士医薬品、沢井医薬品 等

4.OTCファーマ

 セルフメディケーションに対応し、一般用医薬品を中心に開発する企業タイプ。OTCとはオーバー・ザ・カウンターの略で、カウンター越しに渡される医薬品のこと。医師が処方する薬ではなく、いわゆる大衆薬のことです。これまではOTCは医療用医薬品の補完的な扱いで、市場の成長力は小さかったのですが、医療費の抑制や規制緩和でOTCに対する注目度は高まっています。[主なメーカー]大正医薬品、小林医薬品、武田薬品、ロート医薬品、エスエス医薬品、興和、佐藤医薬品、エーザイ、ライオン、久光医薬品 等


2010年問題とジェネリック医薬品

 新薬の医薬品は、膨大な研究費と時間をかけて開発されて市場に出ますが、開発の途中で頓挫する薬も多く、その確率は5000分の1〜1万分の1ともいわれています。こうして誕生した新薬は、医療に貢献し、企業に高収益をもたらしますが、それは恒久的なものではありません。
 医薬品にも特許期限があるからです。その有効期限は最長で25年ですが、特許出願は基礎研究の段階で行なうので、臨床試験や当局への申請、承認などを差し引くと、特許に守られた販売期間は十数年というのが一般的です。
 国内の医薬品業界ではいま、2010年問題が取りざたされています。これは、'90年代以降、年間売上高が1000億円を超えるような大型の医薬品が次々とヒットとし、医薬品業界躍進の大きな要因となりましたが、その原動力となった大型製品の特許切れが'06年以降、'08年、'09年、'10年と続いていることを指しています。特許が切れると、後発医薬品(ジェネリック)が出回るようになります。特許がオープンになり、どの医薬品メーカーでも作れるようになるため、価格はぐっと安くなります。まだ日本市場での規模は小さいですが、欧米諸国では新薬をしのいで全体の40〜50%の規模になります。薬価が安いこともあり、厚生労働省では、医療費削減の方針から良質で安価な医薬品の普及を後押ししています。
 医薬品メーカーはジェネリック医薬品の参入によって利益が大幅に減ってしまいます。欧米諸国では、新薬の特許が切れてジェネリック医薬品が開発できるようになると、その新薬が持っていた市場の80%以上が替わってしまうといわれています。世界規模で販売している医薬品ほど、ダメージは大きなものになります。そうならないため、各企業とも収益の高い新薬の開発を急いでいます。

医薬品メーカーにまつわる職種
1.研究
新薬として世に送り出されるのは12,000分の1
2.臨床開発
臨床試験(治験)の企画立案、実施、解析、まとめ
3.生産管理・品質管理
医薬品を製品化する際のチェック
4.学術
医師・MRからの製品に関する問い合わせの対応
5.MR
医薬情報を提供

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