めでぃしーんねっと2019

医薬品メーカー 1

製薬業界における医薬品メーカーの役割と動向

医薬品メーカーの全体像

2015年の国内の医薬品生産金額は約6兆5,890億円(厚生労働省・薬事工業生産動態統計年報)で、構成比で見ると医療用医薬品が全体の89.1%を占め、その他の医薬品は10.9%となっています。
この医薬品を製造開発し、世の中に普及していく役割を果たしているのが医薬品メーカーです。大別すると「医療用医薬品メーカー」と「一般用医薬品(大衆薬)メーカー」に分けられ、各社がそれぞれの強みや特徴を活かした企業活動を推進しています。さらに、医療用医薬品メーカーは、「専業メーカー」「兼業メーカー」「外資系メーカー」「後発医薬品メーカー」に分類されます。医療用医薬品を主に製造する専業メーカーに対して、兼業メーカーは化粧品や食品など他産業から参入しているメーカーを言い、近年では薬学生の就職先としても人気を集めています。また、患者が抱える病気の種類や症状が多種多様なことから、医薬品メーカーは多品種少量生産による業態に特色があります。
医薬品メーカー(後発医薬品メーカーを除く)にとって最大の収益源となるのが、「新薬」の製造開発とその上市(世の中に普及するこ と)です。画期的な新薬を開発すれば、その企業の業績は大幅にアップすることから各社が開発競争にしのぎを削り、大手企業を中心に多大な研究開発費を投じています。

医薬品メーカーの種類

ジェネリック(後発)医薬品の台頭と普及

ジェネリック(後発)医薬品は、特許が切れた新薬と同じ有効成分を使って製造した薬です。新薬に比べて研究開発にコストや時間がかからない分、割安に生産できる点が特徴で、一般に発売直後で新薬より30%程度安く、販売競争を通じてさらに安価になります。
厚生労働省は年々増大する医療費を抑制するため、2013年4月に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定し、取り組みを進めてきました。さらに、2015年6月の閣議決定において、2017年に70%以上にするとともに、2019年度から2020年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上とする、新たな数量シェア目標が定められました。
このような背景のもと、国内の後発医薬品市場では、外資系企業の進出や資本・業務提携が加速し、国内新薬メーカーが後発薬事業に参入・注力する傾向も見られます。また、国内後発医薬品メーカー各社が、医薬情報担当者(MR)を増員する動きも増えてきています。

製薬業界を取り巻くさまざまな話題・課題

分子標的治療薬、バイオ医薬品、iPS細胞への期待

がんなどの難病を患う患者への朗報として、「分子標的治療薬」が注目されています。がん治療の場合、抗がん剤ががん細胞以外の正常細胞も傷つけてしまう可能性があるのに対して、分子標的治療薬は分子レベルでがん細胞の増殖や浸潤、転移に関係する分子に的を絞ってピンポイントで攻撃するため、増殖や進展を抑えるメリットがあります。「夢の新薬」と言われ、今後も新たな分子標的治療薬の誕生が期待されますが、進化の一方で副作用や有害事象、高い薬剤費への対策などが解決すべき課題としてあげられます。
また、大手製薬会社では、遺伝子組み換え技術を中心とした生物工学(バイオテクノロジー)を駆使して製造する「バイオ医薬品」へのシフトを進めています。その代表である抗体医薬品は、生体がもつ免疫システムの抗体を利用した医薬品で、がん細胞などの細胞表面の目印となる抗原をピンポイントでねらい撃ちすることが特徴。標的以外に作用することがほとんどないため、想定外の副作用が出ることが少なく、がん、関節リウマチ、感染症、有効な手立てがない難病などの治療において、高い効果と副作用の軽減が期待されています。
さらに、京都大学の山中伸弥教授のノーベル賞受賞で話題を呼んだ「iPS細胞」を使った再生医療研究への参入も相次ぐなど、製薬各社の新たな取り組みが進んでいます。

ドラッグ・ラグの問題

欧米で開発・発売された新薬が日本で使用が認められ発売されるまでには、国内での治験実施と承認審査をクリアすることが義務付けられており、一般的に非常に長い時間がかかります。欧米との発売時間差は平均2.5~4年で、この欧米と日本間での新薬承認の時間差によって、海外で新薬が先行販売されているのに国内では販売されていない状態、いわゆる「ドラッグ・ラグ」が問題となっています。
主な原因は承認審査の遅れと治験の空洞化にあると見られていますが、この時間差によって日本国内の患者が欧米の患者より治療が遅れたり、場合によっては手遅れになるといった、必要な治療を国民がタイムリーに受けられない事態が起きています。

薬価の改定による影響

医師が患者向けに処方する薬の価格である「薬価」は2年に一度、中央社会保険医療協議会での議論を踏まえて改定が行われます。製薬会社と病院・保険調剤薬局との取引価格の下落に伴い引き下がるのが通例です。
多額の研究開発費を投じて開発した新薬でも特許期間から2年ごとに公定価格が下がり続けるため、製薬会社からは採算が合わないという声も出ており、日本市場での新薬投入が後回しになる事態が増え、ドラッグ・ラグの要因にもなっています。
そこで厚生労働省では、製薬会社が日本市場に新薬を投入しやすくするために、特許期間中は発売時の価格を維持するという特例措置を平成22年度の改定で試行され、要件を満たす600超の品目に「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」を行っています。

オーダーメイド医療

個々の患者の症状や体質にあわせた治療を目指す「オーダーメイド医療」が近年注目されています。自分の体型や好みに合わせてスーツ等を仕立てることをオーダーメイドと言いますが、医療の世界でも同じような考え方を取り入れていこうとする動きが見られます。
患者の疾患は千差万別なため、オーダーメイド医療では一人ひとりに最も効果的な薬の種類や副作用を起こさない分量を判断し、調整した上で処方を行うことを目的としています。その判断基準となるのが「遺伝子情報」です。人間の遺伝子情報(ゲノム情報)を解析することによって、その人に合った薬の種類や適正な分量の把握が可能で、薬物治療において高い効果が期待されています。
また、オーダーメイド医療の使用薬は、臨床試験段階でさまざまな遺伝子に対してどのような副作用が発生するか調査するので、患者は副作用がより少ない薬を選択できるメリットがあると言われています。

医薬品メーカー 2

製薬業界の仕事を紹介【MR職】

MRは医薬情報担当者

MRとはMedical Representativeの頭文字をとったもので、医薬情報担当者のことを言います。MRの主な仕事内容は、自社製品の営業活動を通じた情報伝達、患者への投与後の薬効・副作用・相互作用の情報収集、製品のクレーム処理、自社開発部門が行っている治験への協力などを担当します。自社の医薬品に関する情報を正しく医療関係者に伝え、効果的な使用によって患者の治療に役立てていくことを最終目的としています。
また、医薬品メーカーの中には医療用医薬品を専門に取り扱うMRとOTC医薬品を専門に取り扱うOTC-MRに担当領域を分けているケースもあり、後者の場合はドラッグストアを得意先とした活動に従事していきます。
MRはドクターにとってもっとも信頼できるパートナーと言われますが、これまでに紹介してきた業務を担当することから、「医薬に関する優れた知識」と「コミュニケーション能力」が大切な要素として求められます。

自社製品の情報伝達
自社製品のアピールポイントにとどまらず、医薬品に付きものと言われる副作用や医薬品の併用で起きる相互作用などを伝えることが必要です。
自社製品の情報収集
PMS(Post Marketing Surveillance:市販後調査)に基づく全医薬品の副作用情報収集、使用した医薬品の症例成績の収集を行い、これによって未知の副作用を集め、医療機関などへ情報をいち早く提供し、重大な事故防止に努めます。
クレーム処理
自社製品に関する医療機関などからのクレームを会社に伝え、改善結果を報告します。
治験への協力
治験は主に開発部門のスタッフが担当しますが、MRが進行業務に協力するケースもあります。
MR(医薬情報担当者の活動) MR(医薬情報担当者の活動)

薬学部出身者の存在感

MRを出身学科別に見ると、約半数が文系出身者で占められ、薬学部出身者が20%、残りが理学部や農学部出身者という構成になっています。医薬に関する知識の習得が必須となるため、メーカー各社は教育研修に重点を置いています。その中でも、薬学部出身者は大学時代に得た知識やスキルというアドバンテージがあるため、研修の場で中心的な存在感を発揮し、他学部出身者へ教示したり、アドバイスをするケースも見られます。

医師への接待の自主規制強化

医療用医薬品製造販売公正取引協議会では、MRによる医師への接待にかかわる自主規制が強化。具体例をあげると、「接待上限額2万円まで(商談・打合せを伴う飲食は5,000円まで)」「2次会、ゴルフやカラオケ、観劇やスポーツ観戦などは費用を出さない 」「製品説明会の弁当・茶菓など 3,000円まで」といったものになります。
「接待攻勢で薬を売る時代は終わった」という業界での共通認識のもと、医師そして患者が求める“本当に価値ある情報提供”を実践していくために、医薬情報のプロフェッショナルであるMRの存在感が、今後ますます高まっています。

製薬業界の仕事を紹介【研究・開発】

新薬開発への期待

新しい薬が世の中に出る確率は30,000分の1と言われ、10~20年の長い年月をかけて候補物質の選別から動物実験、治験といったプロセスを経て、さらに医薬品が認可されるまでに多い場合1,000億円という膨大な費用がかかると言われています。
したがって、研究・開発職には地道な努力と忍耐力が必須となりますが、「自分がかかわった薬」が世の中に誕生した時には何物にも代えがたい、格別なやりがいと喜びを得ることができます。

新薬開発のプロセス 新薬開発のプロセス

MR認定試験と専門MR

MRになるためには製薬企業に入社後、「MR認定試験(認定元:公益財団法人MR認定センター)」に合格することが必要条件となります。MRになるための導入教育を修了すると受験資格が得られ、その後試験に合格すると「MR認定証」を取得することができます。なお、MR認定証は5年単位で更新されます。
また、疾患の高度化・多様化への対応として、オンコロジー(がん)・中枢神経・循環器・内分泌・眼科など領域別の専門MRへのニーズが高まっています。

CRO・SMO

治験業務の役割と動向

新薬開発に欠かせない重要な業務

新薬が開発され上市に至るまでには、実際に患者や健康な人に投与して有効性・安全性を確認する「治験」というプロセスが必要です。治験は薬事法とGCP(Good Clinical Practice:医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)という世界共通基準のルールに則って行われます。被験者の人権や安全を守りながら治験の質と信頼性の高いデータを確保することが重要で、それらの業務の一翼を担うのが、CRO(Contract Research Organization)とSMO(Site Management Organization)です。
現在、日本国内では海外ですでに承認されている薬が使用できない「ドラッグ・ラグ」が問題視されています。そのため、製薬会社の中には治験環境がより整った欧米に開発拠点を移設したり、治験自体を外国で実施しようという動きもみられ、国内での治験の空洞化も懸念されています。
その背景にあるのが、日本と欧米の異なる治験事情です。欧米に比べて日本には治験業務に携わる専門スタッフが少ないこと、患者へのメリットが明確でないため被験者の数を確保しにくいこと、病院と製薬会社との関係が不明瞭といったことが、以前から指摘されています。しかし、医療の現場では新薬の誕生を待ち続ける人たちが多数存在し、国際的に通用する治験環境の整備が求められています。そこで重要な役割を果たすのがCROとSMOです。明日の新薬開発をよりスピーディに、より確実に実現していくうえで、治験業務に必要不可欠な存在であるCROとSMOに大きな期待が寄せられています。

治験業務の流れ(CROとSMOの活動内容) 治験業務の流れ(CROとSMOの活動内容)

治験業務の一翼を担うCROとSMO

CROは製薬企業からの依頼を受けて、臨床試験から販売後調査までのさまざまな業務を代行・支援する医薬品開発業務受託機関です。臨床試験が関連法規や実施計画書に則って正しく実施・記録・報告されているかをはじめ、協力を得ている被験者の人権・安全・福祉が保護されているかを保証するモニタリング業務、臨床試験などによって集積された被験者のデータを科学的かつ倫理的に処理するデータマネジメント業務・統計解析業務、厚生労働省への承認申請のために必要な書類・論文を作成するメディカルライティング業務、その他に臨床システム業務や製造販売後調査など、広範多岐にわたる業務を製薬企業から受託して実施していきます。
一方、医療機関(病院)の治験業務を支援するのがSMOです。医療機関の治験実施施設と契約し、専門知識を持ったスタッフを派遣して、GCPに則った適正で円滑な治験が実施できるように、各種の煩雑な業務をサポートしていきます。治験に関わる医師や看護師、事務スタッフの業務を支援することで負担を軽減し、治験の品質とスピード向上を目指します。

治験業務の職種と仕事内容

明日の新薬を生み出す治験には、さまざまな疾患や新薬の知識を得られ、広い視野で物事を捉えられるようになると同時に、薬剤師としての知識を活かす場面もたくさんあります。新薬の登場を待ち続ける多くの患者に貢献できる仕事としての魅力があり、また、それが実現された時には、格別なやりがいと達成感を味わうことができます。

CRA(臨床開発モニター)の主な仕事内容

モニタリング
臨床試験が関連法規や実施計画書に則って正しく実施されているか、被験者の人権や安全が保護されているかをチェックする業務。さまざまな背景から被験者の心情や気持ちを読み取って、サポートしていくことも必要です。治験を担当する医療機関の医師に対して、臨床試験にかかわる事項全般(目的・方法・デザイン・統計学的な考察、組織・責任体制など)を記載した実施計画書の説明を行い、臨床試験の進捗状況も確認し、症例報告書の記入依頼・回収・精査まで担当します。
データマネジメント・統計解析
臨床試験で集積された症例データを精査・集計・解析する業務。臨床試験で回収された症例報告書のデータ管理、また統計解析計画の立案から実施、さらにその計画書や報告書の作成を行います。
メディカルライティング
薬事法やGCPなどのガイドラインを遵守して、臨床試験と承認取得に必要な各種申請書類・報告書・論文の作成を行います。
臨床システム
臨床試験(モニタリング、データマネジメントなど)についてシステムを使用して、業務効率化・データの質の向上を図ります。
製造販売後調査
製造販売後、安全性・有効性に関する一連のリサーチ業務を実施していきます。

CRC(治験コーディネーター)の主な仕事内容

治験業務をトータルサポート
別名、治験コーディネーターとも呼ばれ、治験を実施する医療機関と提携して治験業務をトータルに支援します。被験者に対するインフォームド・コンセント(説明と同意)や同意書への署名、不安や心的負担を軽減するためのケア・サポート、治験薬や治験データの管理、症例報告などの記録作成、来院日や検査などの管理、担当医師のサポートといったさまざまな役割を担います。CRCには、SMOに所属して医療機関へ派遣されるスタイル以外に、医療機関に薬剤師として所属し業務に従事する「院内CRC」もあります。
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