めでぃしーんねっと2021

ドラッグストア 1

ドラッグストア業界の市場推移と動向

未病や予防医療の高まり

厚生労働省公表「2017年度医療費の動向」によると、国民医療費は42.2兆円で、高齢化社会の進行に伴い、今後もさらに増加していくことが確実視されています。
現在、この医療費の伸びを抑制するために、政府による待ったなしの政策が進められています。しかし、少子高齢化社会の進行という現実はそれを嘲笑うかのように、国民医療費は年々増え続けています。
このような背景のもと、新薬に比べて安価なジェネリック(後発)医薬品の普及率を引き上げる取り組みが進んでいますが、一方で国民自らが自身の健康を管理する「セルフメディケーション」が医療費の増加を防ぐ効果的対策として奨励され、未病や予防医療へのニーズが高まっています。その役割を果たす重要拠点として、一般用(OTC)医薬品から医療用医薬品までを幅広く取り扱うドラッグストア業界に注目が集まっています。

より身近な存在として

下の図は、全国のドラッグストアの総店舗数と総売上高の推移を示したものです。この10年間を見ると堅調に推移し、2018年度総店舗数は2万228店、総売上高は7兆2,744億円を記録。OTC医薬品のインターネット販売が日常化し、異業態を含めた企業間の競争はますます厳しさを増しているものの、消費の多様化、セルフメディケーションや高齢化社会への対応というニーズを的確にとらえ、積極的な出店とともに着実に成長を遂げている有望市場であることがわかります。
さらに、商品別売上高構成比を見ると医薬品が31.3%でもっとも高く、次いで日用雑貨の21.2%、化粧品の20.8%になっており、ドラッグストアの未病・予防医療への貢献度がうかがえます。また、全国の医薬品の売上高(推定)は2兆2,769億円で、「調剤」の伸びが後押ししています。ドラッグストア業界の調剤分野への積極的な取り組みが、功を奏している結果が表れています。
このようにドラッグストア業界は、私たちの生活に深く浸透し、より身近でなくてはならない健康寿命延伸産業として発展を遂げてきており、国民生活の安全と安心に確かな貢献を果たしています。

全国のドラッグストア総店舗数・総売上高 商品別売上高構成比(2014年度) 全国のドラッグストア総店舗数・総売上高 商品別売上高構成比(2014年度)

一般用医薬品販売を取り巻く環境が大きく変化

薬剤師と登録販売者

2009年6月から施行された改正薬事法は、ドラッグストアでの一般用(OTC)医薬品の販売方法に大きな変化をもたらすことになりました。
一般用(OTC)医薬品はリスクの程度に応じて、「特にリスクが高いもの(第1類)例:H2ブロッカー含有薬、一部の毛髪用薬等」「リスクが比較的高いもの(第2類)例:主なかぜ薬、解熱鎮痛薬、胃腸鎮痛鎮けい薬等」「リスクが比較的低いもの(第3類)例:ビタミンB・C含有保健薬、主な整腸薬、消化薬等」の3グループに分類され、情報提供について重点化。第1類OTC薬を販売できるのが薬剤師に限定されるのに対して、第2・3類OTC薬は薬剤師に加えて登録販売者でも販売することが可能になりました。

薬剤師の役割がより明確に

改正薬事法の施行は、高齢化社会の進展で増大する医療費抑制に向けて、軽度の病気はできる限り病院にかからず、自分で治療・予防するセルフメディケーションの推進を目的としています。そして、いわゆる「登録販売者制度」は、OTC医薬品販売における薬剤師と登録販売者とのすみ分けを行うことで、薬剤師の役割を明確にしています。
ドラッグストアの薬剤師は、第1類OTC薬を取り扱うことによって、より専門性を発揮して顧客の安全性の確保に努めるとともに、生活習慣病対策の充実を視野に入れたスイッチOTC薬への注力、さらに登録販売者の指導・管理など、薬剤師にしかできない仕事に傾注していく大切な役割が求められています。地域医療に貢献する「かかりつけ薬剤師」として、今まで以上に大きな期待が寄せられています。

一般用(OTC)医薬品のインターネット販売が解禁

一般用(OTC)医薬品のインターネット販売を解禁すべきかどうか――。さまざまな議論が交わされ、国と民間通販企業との間で最高裁まで争われた問題にようやく終止符が打たれ、2014年6月12日からの改正薬事法(現薬機法)によって新しい販売ルールが適用されるようになりました。
新たなルールでは、医薬品の区分を見直し、スイッチ直後品目※ならびに劇薬など他の一般用(OTC)医薬品とは性質が異なるものを「要指導医薬品」に指定し、薬剤師が対面で指導を行うことを義務としています。その一方で、第1類、第2類、第3類のすべての一般用医薬品は、一定条件のもと、インターネットや電話などで 販売できるようになりました。
そして、インターネット販売ができる具体的な条件として、以下の内容を定めています。
〇薬機法により、薬局または店舗販売業の許可を受けている実店舗を持つ薬局・薬店であること
〇実店舗は週30時間以上開店していること
〇実店舗は、購入者の見やすい場所に店舗名などの標識があること、購入者が容易に出入りできる構造であることなど、薬機法の基準を満たしていること
〇薬剤師または登録販売者が常時、配置されていること
〇インターネットで販売できる医薬品は、実店舗に貯蔵・陳列している医薬品であること
〇インターネットのほかに、対面や電話での相談体制を整備していること など
このようにインターネット販売解禁という大きな時流の中で、一般用(OTC)医薬品にかかわる薬剤師の役割がますます重要性を帯びてきています。
※スイッチ直後品目:医療用から一般用に移行して間もなく、一般用としてのリスクが確定していない医薬品。
原則3年の安全性調査を行い、安全性が確認されれば一般用医薬品に移行する。

ドラッグストア 2

ドラッグストアで働く薬剤師の仕事

第1類医薬品の販売強化が課題

調剤業務の堅調な伸びもあってドラッグストア業界の成長は続いていますが、一方で向き合うべき課題もあります。とくに、第1類医薬品の販売は、ドラッグストア業界各社にとって共通の課題として、そのてこ入れと強化を対策に掲げています。
たとえば近年では、新型インフルエンザの流行によって風邪を発症した人の多くが薬局ではなく医療機関を訪問したこと、花粉症の飛散減少による鼻炎治療薬の販売が伸び悩んだことなどが、その理由にあげられます。
その他に消費者(患者)が薬剤師による副作用リスクについて書面での説明を手間と感じていること、また直接手を触れることのないように施錠されたガラスケースやカウンター奥に陳列された厳格な販売方法によって、第1類医薬品と消費者(患者)との間に距離感が生じたことも主な原因と言えます。
しかし、改めて考えてみれば、これこそが薬剤師にとって真骨頂を発揮する場面と言えるのではないでしょうか。消費者(患者)の表情やしぐさから、疾患ニーズ・不安・悩み・課題などを俊敏に察知して、的確にコミュニケーションを図り、懇切丁寧に応需していく。それは、医療・医薬に関する専門知識とスキルを持った、薬のプロフェッショナルである薬剤師だからこそできる職能に他なりません。
さらに最近では、ロキソニン、アレグラ、エパデールなどの医療用医薬品から転用した「スイッチOTC医薬品」に注目が集まっています。スイッチOTC医薬品は医療用医薬品として十分に使用経験がある成分のうち、比較的副作用が少なく、安全性が高い成分をOTC医薬品に転用したもので、通常のOTC医薬品よりも作用の強い成分が含まれている場合もあり、薬剤師に相談して使用することが求められています。
まさにセルフメディケーションをけん引する薬剤師の真価が試される局面であり、その期待に応えていくことによって、大きなやりがいと達成感を得ることができます。

スイッチOTC薬の例
スイッチOTC薬の例 表 スイッチOTC薬の例 表

信頼される「かかりつけ薬剤師」へ

調剤事業の強化に注力

スーパーやコンビニエンスストアなどの本格的な参入、インターネット販売の事実上の解禁など、さまざまな要因によって一般用(OTC)医薬品市場の競合が激化していく中で、ドラッグストアは新たな収益の柱として、医療用医薬品を取り扱う調剤事業の強化に力を注いでいます。
ドラッグストア業界では大手を中心に、繁華街を中心とした面分業薬局や、大病院・中小病院・医院の門前薬局として、調剤併設店舗や調剤専門店舗を積極的に展開。薬剤師が患者ニーズに応需しています。これによって、たとえば患者が駅前や自宅近く、通勤時や買い物途中に、ドラッグストアの調剤店舗で薬剤師に処方せんを渡して薬を受け取るケースも増えています。
また、大手ドラッグストア業界では、医療機関と連携して医療分野への進出と調剤事業のさらなる拡大を目指して、調剤専門会社を新たに設立。薬剤師採用に積極的に力を入れています。
調剤ニーズへの対応に加えて、政府が定めた薬価によって販売される医療用医薬品は高い利益率が見込めることから、ドラッグストアでは調剤機能を備えた店舗の拡充を進めています。そして、そこでの業務に従事する必要不可欠な存在として、薬剤師への期待感も高まっています。
地域に根付いたドラッグストアの調剤店舗や調剤専門会社ならではの、信頼される「かかりつけ薬剤師」の活躍の場が拡大しています。

医療や臨床に近い取り組みも

調剤業務の強化と積極的な進出を果たす一方で、ドラッグストアの中には訪問看護ステーションの開設や在宅医療事業、治験施設支援など、より医療や臨床に近い取り組みを行っている企業も出てきています。地域のかかりつけ薬局であるために、ドラッグストアはさまざまな機能と役割を駆使しています。そして同時に、薬剤師が医療者として存在感を示していく場も広がっています。

新たな歴史を築く面白さ

ドラッグストア業界にとって調剤業務への本格的な参入はまだ歴史が浅いものの、だからこそ薬剤師にとってはこれから新たな調剤店舗のスタイルを築き、自らが率先して理想の薬剤師像を追求していく面白さや喜びがあります。
言わばフロントランナーとして中心的な役割を担う人材を育成するために、各社では薬剤師が調剤業務に専念できる職種別コースの設置、専門知識やスキルを存分に習得できる教育研修制度の充実に力を注いでいます。

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