めでぃマガ2021
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製薬業界を取り巻くさまざまな話題・課題●分子標的治療薬、バイオ医薬品、iPS細胞への期待がんなどの難病を患う患者への朗報として、「分子標的治療薬」が注目されています。がん治療の場合、抗がん剤ががん細胞以外の正常細胞も傷つけてしまう恐れがあるのに対して、分子標的治療薬は分子レベルでがん細胞の増殖や浸潤、転移に関係する分子に的を絞ってピンポイントで攻撃するため、増殖や進展を抑えるメリットがあります。「夢の新薬」と言われ、今後も新たな分子標的治療薬の誕生が期待されますが、進化の一方で副作用や有害事象、高い薬剤費への対策などが解決すべき課題としてあげられます。また、大手製薬会社では、遺伝子組み換え技術を中心とした生物工学(バイオテクノロジー)を駆使して製造する「バイオ医薬品」へのシフトを進めています。その代表である抗体医薬品は、生体がもつ免疫システムの抗体を利用した医薬品で、がん細胞などの細胞表面の目印となる抗原をピンポイントでねらい撃ちすることが特徴。標的以外に作用することがほとんどないため、想定外の副作用が出ることが少なく、がん、関節リウマチ、感染症、有効な手立てがない難病などの治療において、高い効果と副作用の軽減が期待されています。さらに、京都大学の山中伸弥教授のノーベル賞受賞で話題を呼んだ「iPS細胞」を使った再生医療研究への参入も相次ぐなど、製薬各社の新たな取り組みが進んでいます。●ドラッグ・ラグの問題欧米で開発・発売された新薬が日本で使用が認められ発売されるまでには、国内での治験実施と承認審査をクリアすることが義務付けられており、一般的に非常に長い時間がかかります。欧米との発売時間差は平均2.5~4年で、この欧米と日本間での新薬承認の時間差によって、海外で新薬が先行販売されているのに国内では販売されていない状態、いわゆる「ドラッグ・ラグ」が問題となっています。主な原因は承認審査の遅れと治験の空洞化にあると見られていますが、この時間差によって日本国内の患者が欧米の患者より治療が遅れたり、場合によっては手遅れになるといった、必要な治療を国民がタイムリーに受けられない事態が起きています。●薬価の改定による影響医師が患者向けに処方する薬の価格である「薬価」は2年に一度、中央社会保険医療協議会での議論を踏まえて改定が行われます。製薬会社と病院・保険調剤薬局との取引価格の下落に伴い引き下がるのが通例です。多額の研究開発費を投じて開発した新薬でも特許期間から2年ごとに公定価格が下がり続けるため、製薬会社からは採算が合わないという声も出ており、日本市場での新薬投入が後回しになる事態が増え、ドラッグ・ラグの要因にもなっています。そこで厚生労働省では、製薬会社が日本市場に新薬を投入しやすくするために、特許期間中は発売時の価格を維持する特例措置として「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」を2010年度の薬価改定から施行。加算要件を満たす品目数は2012年度の薬価改定では700品目を超え、その後の改定でも施行は継続されています。業界・職種研究18

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